感性医療

2022.01.24

私はどうでもいい

患者さんは自分の本音を言わないことが多いです。その言葉を鵜呑みにせずにその奥に隠された嘆きに触れた時に、その方が抱えてきた人生が見えてきます。よく頑張って生きてこられました。

静かにその命を終えようと覚悟しているその人の気持ちを少しでもわかってあげれたら、見方がかわるかもしれません。

以下はFacebookであげた内容です。

【私はどうでもいい】

本日、初診の膵臓がんの患者さん。
いくら治療の説明をしても心ここにあらず。
まるで他人事。
抗癌剤の選択も息子さん任せ。こちらの説明も筒抜けで理解しようとせず。

以前の自分なら、一通り説明しても治療を希望されないなら縁がないと割り切って終わっていましたが、明美ちゃんのLPLを受講してから、なぜこの患者さんはこのような態度をしているのか知りたくなり、さらにお話を聞いて行きました。

そうすると、ポツリポツリと自分のことを話し始めました。

長女で親からいつも怒られていた過去。
離婚、再婚で自分を責め続けた人生。
不平等で苦しんだ過去。
亡くなった弟から拒絶された悲しさ。
誰かの期待に応えていく人生。

これまで家族に話をしたこともなかったそうです。

私は話を聞いていて、ようやくこの方がなぜ治療に前向きでないかがわかりました。

人に迷惑をかけずに静かに人生の幕を閉じたかったのです。

でも、それは本当の感情でしょうか?

そこで、患者さんとOリングで深層心理を確認していくと、本当は孫と遊びたい、お世話になった人達に会いに行きたいという感情があることがわかりました。

さらに亡くなった弟さんとの誤解があるのではないかと思い、Oリングを続けていくと、死んだ弟さんの最後の感情は恨み辛みではなく、この患者さんへの感謝と謝罪の感情でした。

体感で無意識領域を知ったこの患者さんは、目に力が入り、病気と真剣に向き合い、抗癌剤を受ける決意を持ちました。もちろん抗癌剤に副作用はあります。けれども今ならこの方は立ち向かえるでしょう。

帰り際にスタッフに「ここに来る前と全然違う。心がスッキリしました。」と言いながら帰って行きました。

膵臓がんは厳しい病気だし、克服できるとは限りません。多くの方は1年以内に命を落とします。けれども、本当の自分に繋がり、人生の誤解を解くことが出来れば時間は関係ありません。命は短いから負け、長いから勝ちではないのです。

本日の診療は医学会では評価されませんし、Oリングなんて非科学的なことやるなんて馬鹿?と批判を受けるでしょう。エビデンスとしても残りません。無料医療相談だったので、クリニックの利益にもなりませんでした。

でも、自分としては最高の医療を提供できたと思いました。

感性医療

治療の選択も大事だけれども、どのような気持ちで治療を受けるのかの方がもっと大事。

岡部明美さんのLPL講座のおかげで大切なものを知りました。

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